春先は花粉症患者にはつらい季節だが、今年は以前に増して危険が伴う。スギ花粉は昨シーズンを上回る飛散量が予測され、耳鼻科医から「くしゃみなどによって周囲にコロナをまき散らす可能性」が指摘されている。 ◇ ◇ ◇ 日本気象協会は今年春の花粉飛散傾向を前シーズン比で、〈九州から関東にかけて多く、四国や東海、北陸、関東の所々で非常に多くなる〉と予想。前シーズンに花粉症の症状が軽かった人も、注意するよう警告している。 一方、全国の花粉飛散の統計を出しているNPO花粉情報協会も<東北南部から関東、東海では昨年の2~4倍になる>という。早いところでは2月初旬から始まる花粉症。東京都民のスギ花粉症推定有病率48・8%からも分かる通り、通勤時の交通機関などは、くしゃみによる飛沫の脅威にさらされることになる。 日本耳鼻咽喉科学会専門医で、瀬尾クリニック院長の瀬尾達氏は言う。 「昨年のスギ花粉の飛散状況は、過去10年に比べて非常に少なかった。コロナ予防のマスクによって花粉症患者が減ったとの報道もありましたが、そもそもスギ花粉のピークである2~3月はマスク不足もありましたし、病院にかかるほどの患者さんが少なかったのは、単純に飛散量が少なかったことが原因とみています」 ■隣の人のくしゃみでクラスターに 瀬尾氏が危惧するのは新型コロナウイルスとの関連だ。 「新型コロナは、ウイルス感染症であるインフルエンザとの同時併発は起こらないとされますが、花粉症はアレルギー性であり別物なので、併発します。花粉症の主な症状はくしゃみ、鼻づまり、水ばなで、いずれもコロナの飛沫感染の経路となります。花粉症を併発したコロナの無症状患者が外出先でくしゃみをすれば、周囲への感染リスクを高めるといえます」(瀬尾氏)
ウレタンマスクはおしゃれだが役に立たない
マスクは不織布の物を(C)日刊ゲンダイ
花粉症の予防対策は、当然ながらマスク選びも大事だ。今月、23区で唯一成人式を開催した杉並区の会場では、出席者に「不織布マスク」を配っている。スーパーコンピューター「富岳」の実証実験で最も飛沫が飛ばないことが分かっているからだ。 瀬尾氏も「花粉症とコロナを防ぐには、家庭用なら『不織布マスク』一択」と強調する。 「不織布マスクのフィルターサイズは5マイクロメートルほどで、30マイクロメートルほどの花粉をブロックできます。一方、コロナなどのウイルス粒子(0・1マイクロメートル)はそれより小さいのですが、飛沫の大きさは5~10マイクロメートルですので、理論上でも不織布マスクの効果が認められます」(瀬尾氏) 現在は多くのメーカーから、おしゃれな布マスクやウレタンマスクが登場しているが、効果のほどは疑問だという。 「富岳」のシミュレーションによると、不織布マスクと布マスクは共に「吐き出し飛沫量」の約8割を抑えた。だが、「吸い込み飛沫量」となると、不織布マスクが7割をブロックしたのに対し、布マスクは5割以上もスルー。電車内で隣の人がくしゃみをしていたら、布マスクでは心もとないことが分かる。ウレタンマスク、フェースシールドやマウスシールドにいたっては気休め程度と考えていい。 ■かゆくて目をこすれば自身も危険 「花粉症患者にもリスクはある。はなをかむために頻繁にマスクを取り外したり、症状として目のかゆみもあります。公共物などに触れた手で、つい顔を触れることもあるでしょう。さらに、花粉症患者が新型コロナウイルスを併発した場合、軽症なら花粉症による鼻水なのか判別は難しい。そのため、アレルギーがある方は、今のうちにかかりつけの病院で初期治療を行ってほしいものです」(瀬尾氏) コロナ感染の典型的な症状としては、くしゃみや鼻水、発熱やだるさ、気管支の炎症などが挙げられるが、花粉症も鼻水に始まり、場合によっては熱っぽい、体がだるいといった症状が出る人もいる。コロナとの区別がつきにくいため、発見が遅れる可能性も指摘される。 一方、雨の日は花粉の飛散量が少なく、一時的に花粉症の症状が治まる。雨天で鼻水が止まらないようなケースは、コロナ感染を積極的に疑った方がいいだろう。 ■“コロナ慣れ”で日々の消毒がおざなりに また、大江戸線の職員間で発生したクラスターでは、宿直施設の共有の手回し式蛇口が感染経路とされた。国立病院機構大分医療センターのクラスターは、飛沫が付いた「タブレット端末」を共有したことが原因とみられている。“コロナ慣れ”したことにより、日々の消毒がおざなりになっていることも考えられる。 コロナに感染した花粉症患者がくしゃみを押さえた手で共有物に触れれば、このようなクラスターはより増える。 浜松医療センター感染症内科部長の矢野邦夫氏が言う。 「手指の高頻度接触面であれば、どこであっても感染源になり得ます。気になるのは次亜塩素酸水による消毒の誤解です。次亜塩素酸水は本来、物品の消毒用ですが、アルコールのように少量では効き目がなく、有効塩素濃度80ppm以上のものを、机などの表面が“ひたひた”になるまでかけて拭き取らなければ効果はありません」 コロナウイルスは空気中に少なくとも3時間は残存するという研究もあるし、お店の人がきちんとテーブルを拭いても、テーブルには素手では触れないのが無難だ。
yahooニュース引用:花粉症が新型コロナ感染拡大リスクに 昨年2倍予想で新たな脅威(日刊ゲンダイDIGITAL) – Yahoo!ニュース
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