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緊急事態宣言も望み薄か、コロナ感染爆発を食い止める「現実的な行動」

年末の銀座

緊急事態宣言後も増え続ける、新型コロナ感染者。どうすればいいのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

グーグルAIの予測が変化
「コロナ陽性者は増え続ける」

直近のグーグルのAIの「新型コロナ感染予測」によれば、これから28日間について、「2月6日まで新規陽性者数はひたすら増え続け1日1万人を超えるようになる」のだそうです。先週は同じAIが「緊急事態宣言発令を受けて、陽性者数が1月下旬に減少に転じる」と予測していましたが、判断を変えたようです。

AIがどう考えているのか、中身はブラックボックスなので人間にはわかりません。ただ想像するに、この1週間でグーグルのAIはGPS情報のビッグデータなどをもとに「緊急事態宣言だけでは新型コロナの第3波は抑え込めない」と判断したのではないでしょうか。

街の声からも不安が感じ取れます。飲食店の営業時間が20時までに制限される一方で、街の風景はそれ以外、大きくは変わっていません。「そもそも時間で区切ることで効果が出るわけではないだろう」という意見は、「休日昼間の繁華街で人出が宣言前よりも増加している」といった報道に触れると、もっともな主張に思えます。

この点に関しては色々な政治家が色々なことを言っており、結果として国民が混乱しています。具体的に言えば、緊急事態宣言下の都府県では「20時以降の外出の自粛」が当初唱えられていましたが、これは若者を含めてかなり徹底されていたわけです。

そこにあとから「誤解がある」「昼食はリスクが低いということではない」と、当初の呼びかけを否定するようなコメントも出てきました。自粛の効果を上げるためには国民が自粛期間に何をすべきかを指示することこそが重要なのですが、そこが混乱しています。

著書『日本経済予言の書』でも述べましたが、この冬の緊急事態宣言は日本経済にとって昨年以上に重要な局面です。普通の対策では自粛が昨年以上に長期化し、そうなればぎりぎりで持ちこたえている中小企業の連鎖破綻が起きる可能性がある。そうならないために、コロナを早期かつ確実に収束させる「現実的な行動」を打ち出す必要があります。

では、効果を期待できる指示は何かというと、昨年のコロナ流行時において明らかに効果が認められたものは、以下のような行動でしょう。

(1)マスクの着用
(2)ソーシャルディスタンスという概念の導入
(3)手洗い、うがいの励行

「3密を避ける」という言葉もわかりやすかったと思います。

マスク、手洗い、うがいの他に
さらにとるべき行動とは

そして現在の問題は、この3つの行動が徹底されているにもかかわらず、第3波が本格化してきたことで、「従来の行動に加えてさらに効果がある行動をとらなければいけない」ということです。本稿では、それが何なのかを探っていきたいと思います。

私は医学の専門家ではないので、本稿の前提として、医学の観点ではなく人間行動学の観点からその「効果がある行動」をお話したいことを、先にお断りしておきます。その違いは、昨年起きた「マスク論争」を思い起こしてもらえるとわかります。

医学の観点では、市販の不織布マスクには新型コロナから自分の身を守る効果は期待できないそうです。ウイルスが網目よりずっと小さいからです。しかし、人間行動学の観点では、皆がマスクをすれば新型コロナの拡大は一定数防げます。理由は、不織布マスクには他人に飛ぶ飛沫を減らせるメリットがあるし、マスクをすることで手に付いたウイルスを無意識に口に運ぶことを防げるからです。

今求められるのは、これと同じ考え方です。たとえ医学的に厳密ではなくても、効果がありそうな社会的な施策は存在します。先ほど挙げた3つの習慣もそうだし、東京都知事が広めた「3密」や「5つの小」は、人間の行動を変えることでコロナを収束させる効果が期待できました。

もし医学的に新型コロナの拡大を封じ込めようとしたら、完全に都市をロックダウンするしかないわけです。しかし、それをやりたくないため、日本政府は学校にも公共交通機関にも昼間の商業施設にも営業や運営を容認しています。それが前提となっているわけなので、従来の取り組みに「何か簡単に実行できる新しい習慣」をもう1つ加えることで、より効果を導き出せないか。私たちはそこを考えるべきだと思います。

では、ある程度自粛生活をしながら、新型コロナから身を守るにはどうすればいいでしょうか。ここで感染者との接触確率を考えてみます。冒頭のグーグルのAIの予測を前提に考えると、これからの1カ月間で予測される新規の陽性患者数は、約23万人とされています。これまでの1年間の累計感染者数が30万人ですから、それにほぼ匹敵する数字です。

とすると、自分の目の前に座っている人が新型コロナ感染者である確率はどれくらいでしょうか。23万人を日本の人口で割ると、確率は約0.2%と計算されます。言い換えると500人に1人。自分のとる行動が打ち合わせだとしても、会食だとしても、レジでのやりとりだとしても、混雑した電車に乗ることだったとしても、リスクは同じ確率です。

数字的には微妙に現実的な怖さを感じる一方で、500人のうち499人はセーフです。つまり今年の第3波の流行では、感染者との接触確率は昨年よりもかなり高くなった一方で、それでもなかなか当たらないロシアンルーレットのような状態だという、微妙な線なのです。

自分が他人にうつす確率を減らす
ための行動は、まだ残っている

そうした前提で「接触については自粛できるだけ自粛し、これまでの新しい生活習慣を継続したうえで、それ以外に感染確率を減らす方法はないだろうか」という点について考えてみましょう。

この問題を考えていくと、先ほどの「マスク論議」と同じ構造であることに気づきます。つまり、自分が感染する確率はこれ以上減らせないものの、自分が他人にうつす確率を減らすための行動がまだ残っているようです。

繰り返しますが、これは医学的な見地からは決して厳密な提言ではありません。あくまで人間行動学的に効果がありそうだという意味です。自分が他人に新型コロナをうつす確率を減らす方法は、新しいマナーとして、次の行動を新たに加えるというものです。

(1)発熱したら周囲に宣言する

(2)発熱宣言をした人と過去2日以内に接触した人は、今日を含め3日間外出を自粛する

特に(2)が、自分が他人に新型コロナをうつしてしまうリスクを減らすカギです。

これはいくつかの点で、医学的な見地からの提言とは異質なものです。現在の医学的な提言では、新型コロナウイルスの陽性が判明した人を基準として、その陽性者が発症する2日前までに接触者した人を「濃厚接触者」と定義し、強い行動の自粛を求めています。そこに私の提案を採用すると、濃厚接触者よりも広い範囲に自粛を広げることになります。

一方で、接触から自粛終了まで合計5日程度ということは、コロナの最大潜伏期間である14日間よりもずっと短い。つまり、完璧からはほど遠い提案ということになります。しかしこの設定は、社会学的に意味があると私は考えています。

発熱したらすぐに宣言する
そして3日間、自粛する

そこから考えれば、自分が他人に新型コロナをうつさないためにできることは、発熱したらすぐ周囲に宣言することではないでしょうか。

私の日常でも「熱が出たので今日のアポイントをキャンセルさせてほしい」という相談が実際にあります。当然ですが、その申し出は歓迎です。こちらとしては、発熱を内緒にしてアポを優先してほしくはないわけです。

そして、発熱を宣言した人が周囲にいて、かつ自分がその人に過去2日以内に接触していたら、その場合は自分も今日から3日間、外出せずに自粛することを社会のマナーとして広めるというのが、私のアイデアです。医学的には新型コロナは最長で14日間潜伏する可能性がありますが、多くのケースでは感染から5日以内に発症します。

発熱がなくても発熱するかもしれないと考え、マナーとして仕事を休む期間として考えると、3日間ならかなり多くの人が実行可能な範囲に含まれるのではないでしょうか。もし感染していた場合、その間が一番他人にうつしやすい時期であるという前提を考慮すれば、陽性判明段階ではなく発熱した段階で自分以外に周囲にも行動自粛を促すのは、社会学的に意味のある行動です。

ここで注意していただきたいのは、この私案のガイドラインは医学的に厳密ではないけれども、社会学的には効果があるかもしれない、という範囲の提案だということです。そもそも、3密もソーシャルディスタンスもその意味では同じで、厳密ではなくともこれまでのコロナの予防にはそれなりに効果がありました。今、新たな局面で求められているのは、それらと同じ意味での社会学的な行動指針なのだと私は思います。

いかがでしょうか。「発熱をしたら宣言する」「その人と接触があったら自分も3日自粛する」ということは、政府の言う「できる限りの自粛を強くお願いする」ということよりも何をすればいいかわかりやすいうえに、「全面的に自粛する」という対策よりも社会として導入しやすい、新しいマナーだと思うのです。

ただ問題としては、これを表すいいキャッチコピーが思い浮かばないこと。小池知事あたりが何かいい言葉を考案してくれるといいのですが、どうでしょう。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)

DIAMOND online引用:緊急事態宣言も望み薄か、コロナ感染爆発を食い止める「現実的な行動」 | 今週もナナメに考えた 鈴木貴博 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)